アウトドアウェア全般においてこれまで当然のように考えられてきた”スリムフィット正義”の概念に一石を投じるよう、リラックスフィットの現代版ニッカボッカの製作に着手した。
筆者がこれまでの登山等のアクティビティを通してスリムパンツを履くことで気になったことが、パンツの内側に汗をかき、湿気を外に逃せないことだった。確かに人間工学的に設計された立体裁断のスリムパンツなど、良く考えられていて動きやすいことも事実だ。ただ、それが故に身体にフィットしすぎていて、捲り上げることもできず、パンツの内側をサラサラの状態に維持することが至って困難だ。身体にフィットしていて動きやすいということは余分な生地が少ないということなので、強風時でも風の抵抗を少なくすることもできる。メリットというとそのくらいだろうか。
本パンツは登山中も下山後も街中で着れることを意識してセットアップスーツのパンツに用いられる仕様を施し、アクティビティ時も着用できるようディティールをアップデートした。
平置きで見ると太く感じるシルエットも、着用すると馴染むよう細かく修正を繰り返した。デフォルトのフィット感(ショート)は8-9部丈になるように設定しているが真冬などでも足首を隠せるようにフルレングスタイプを作り2サイズ展開に。
ディティールとしてはコインポケットを設けていたり、ウエストやヒップ周りにゆとりがでるよう2タックにしている。ウエストは同生地で作成した平紐で縛ることが可能で、トップスのタックインにも対応するようウエストマークをダブルに。
袖口はドローコードで裾絞りができるようになってるが通常はストッパーが生地の外側に出て野暮ったくなりがちだ。またこの場合ドローコードを絞った際にコードが長く垂れ下がり、不意に枝に引っかかるなど嫌な思いをしてきた。本プルオーバーのストッパーは特殊なものを用いて生地の内側に隠し、余分なドローコードを収納できるよう配慮している。この仕様を以てアウトドア/アーバンウェア双方として機能すると定義したい。
機能性の面で言うと、熱を溜め込まないよう外腿から膝にかけてフラップ付きのベンチレーションポケットを設けている。生地は着用時にストレスの少ない4wayストレッチに撥水加工を施した環境配慮型素材を採用している。